戒告処分と訓告・その他の懲戒処分の違い|戒告処分を受けた後の影響
初回公開日:2017年09月11日
更新日:2020年08月28日
記載されている内容は2017年09月11日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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戒告とは?
戒告とは、公務員法に定められた懲戒処分の一種です。公務員の懲戒処分は4つあり、戒告の他には「免職」「停職」「減給」があります。戒告以外の懲戒処分については、後ほど詳しく述べさせていただきます。戒告は、4つの懲戒処分の中では最も軽い罰則です。とはいえ懲戒処分の一種ですので、公務員にとっては重大問題には違いありません。
戒告は、公務員としてふさわしくない行為をした場合に下される警告です。似た表現で「訓告」という処分もありますが、訓告は公務員法に定められた罰則ではないため、戒告よりさらに軽い処分です。
わかりやすく例えると、戒告はサッカーの試合で出されるイエローカードのようなものです。単に口頭で注意されるよりも処分は重いですが、いきなり退場するレッドカードよりは軽い処分です。
サラリーマンに戒告はない?
原則として戒告は公務員にのみ適用されます。そのため、民間の企業に勤めるサラリーマンには戒告処分はありません。ただし、それぞれの企業の就業規則で、戒告に近い内容の規則が定められている可能性があります。
細かい処分の内容は企業によって千差万別ですが、大企業だと公務員に近い処分が下されることがありますので、戒告と同じような懲戒処分があると考えた方が良いでしょう。詳しくは自分の会社の就業規則を調べてみましょう。
就業規則がない場合は、労働契約書などに規定されている場合があります。また、法律に抵触するような重大な違反行為等をした場合には、公務員でなくても戒告と同じかそれ以上の様々な懲戒処分が下されますのでご注意ください。
戒告処分の意味
反省を促す意味
戒告は、公務員としてふさわしくない行動を繰り返さないように、反省を促す意味で行われます。口頭で注意するだけでは、また同じような職務違反をすると考えられる場合に、法律上の懲戒処分という形で行われます。例えば、遅刻や早退をする公務員がいた場合、上司としては最初は「もうしないようにね」と注意するでしょう。
しかし、遅刻や早退を何度も繰り返し、いくら厳重注意しても改善しない場合には、ある程度強い懲戒処分を行い、再発を防ぐ必要があります。その中で一番軽いものが戒告です。戒告をしてもまだ同様の職務違反が続くようであれば、さらに厳しい懲戒処分が下される可能性があります。
最も重い「免職」になると、公務員としてはもちろん一般の企業への再就職もとてもハードルが上がってしまいます。そのため、戒告は強い警告としての意味を持ちます。
戒告は出世に響く
戒告はあくまで「同じ職務違反を繰り返さないように」という警告ですので、戒告処分を受けたからといってすぐに職を失うことはありませんし、給与カットもされません。戒告後も通常通り仕事ができます。しかし、出世しにくくなりますし、昇給もしにくくなります。なぜなら、公務員が昇任するときには、能力評価で一定以上のランクが必要だからです。
そして、昇任の条件として「1年以内」など、直近の一定の期間で戒告などの懲戒処分を受けていないことと定められています。その一定期間を過ぎてから、改めて能力評価することで昇任することが可能ですが、同僚よりも出世が遅れてしまうことになりかねません。
戒告によって減給はありませんが、評価が下がることによって昇給のチャンスを逃してしまう可能性があり、結果的にもらえる見込みの給与が減ってしまうことが考えられます。
戒告についての法律
戒告を含む公務員の懲戒処分は、国家公務員法や地方公務員法に定められています。法的根拠のある処分ですので、原則として金銭的な損失はないとはいえ重く受け止めるべきです。国家公務員法第82条では「この法律等に違反」し「職務上の義務違反や怠慢」があり、「国民の奉仕者にふさわしくない非行」をした場合に、戒告などの懲戒処分が下されると定められています。
地方公務員法第29条にも、ほぼ同じ条文があります。また、第三者的な立場で国家公務員の人事管理を行う人事院の「人事院規則」で、戒告を含む公務員の懲戒処分の種類や効果・事例などが定められています。それをもとに戒告などの処分が行われます。
戒告書と訓告について
戒告と似た処分として「訓告」があります。しかし、戒告と訓告ははっきりとした違いがあります。それは、訓告がただ単に注意するだけであり法的根拠がないのに対し、戒告は国家公務員法または、地方公務員法で定められた懲戒処分であることです。訓告の場合は、法律に基づいた処分ではないので、記録として人事記録に残すほどのことではなく、通常は昇任などに響きません。
ただし、評価の際の心証が悪くなる可能性は否定できません。以上のように戒告と訓告とははっきりとした違いがあるため、注意する側も戒告と訓告のどちらを行うのかをはっきり区別しなければなりません。その区別をするために、戒告書(戒告処分通知書)があります。
戒告書には、どのような行為が法律に抵触したかとその根拠、改善のための提案などが書かれます。決まったテンプレートがあるわけではありませんが、最低限戒告を受けた側が納得できる内容であることが求められます。多くの場合はサインや印鑑が必要です。戒告書は、同じ行為を繰り返さないことを制約する「誓約書」とセットになっている場合もあります。
公務員が戒告処分を受ける具体的事例
具体的にどのような職務違反をしたら戒告になるのか、それは人事院の指針で基準が定められています。その基準例を列挙します。
・正当な理由なく10日以内欠勤する
・遅刻や早退を繰り返す
・うそをついて休暇を申請する
・勤務態度不良
・暴言により職場の秩序を乱す
・事実のねつ造や虚偽の報告
・違法なストライキなどの団体活動
・誤って情報漏えいしてしまう
・政治的目的を持つ文書を配布する
・公務員として認められていない兼業をする
・わいせつな言動
・公金や官物の紛失や損壊
・暴行・器物損壊・遺失物の横領・賭博
・飲酒運転に同情するなどの関与がある
・指導監督者として不適格
戒告とその他の懲戒処分との違い
ここまで、公務員に下される4つの懲戒処分のうちで戒告を主に説明してきました。その他の3つの処分についても簡単に知っておきましょう。まず、戒告の次に重い処分である「減給」です。戒告よりもさらに重大な職務違反をしたり、戒告に相当する行為を繰り返すなどした場合に減給処分が下されます。
減給の処分が下されると、一定の期間一定の基準で給与やボーナスがカットされます。現在では1年以下の期間、給与月額の5分の1以下と定められています。次に重いのが「停職」です。公務員として勤務すること自体がふさわしくない場合で、公務員として働くこと自体ができなくなってしまいます。
1日以上1年以内の期間抵触することになり、その間は給与は支払われませんので、依願退職する人も多いです。4つ目が一番重い処罰が課される「免職」です。横領や窃盗・故意の秘密漏えい・飲酒運転による重大な事故を起こすなど、犯罪性の強い行為をした場合などは、公務員として働けなくなります。
戒告について正しい知識をもとう
突然何の知識もなしに「君は戒告処分だ」と言われたら、びっくりするでしょう。どのような罰があるのかなど、不安がどんどん膨らんでしまうでしょう。なぜなら、人は自分の知らないことが起こると恐怖心が湧くからです。しかし、ここまでの記事をご覧になったあなたなら、正しい戒告についての基礎的な知識をお持ちでしょう。
ですので、戒告にならないためにどのようにするか、そして万が一戒告処分を受けた時の冷静な行動や落ち着いた態度もできるでしょう。