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【業界研究】化学業界の現状・動向・課題について

科学とは「物質の性質・構造・反応を研究する学問」と定義され、石油、天然ガス、石炭、水、空気などを原料に、化学反応を利用して私たちの役に立つ製品を作り出す産業を化学工業と呼びます。

エチレン生産量の減少

エチレンとは、各種プラスチックや合成ゴムの主要原料で、化学業界の景気を示す指標となります。

2016年、倉敷市の水島工業地帯に旭化成のエチレンプラントが稼働を停止しました。2014年には三菱化学が鹿島で稼働を止め、2015年には千葉で設備を止めました。今回の水島プラント停止はその決定的なもので、エチレン生産は完全に縮小傾向にあります。

稼働の停止は、リーマンショックと東日本大地震による2つの大きなダメージから回復できなかったことが理由となりました。人口の減少がはじまった日本で、エチレン生産量が回復する見込みは残念ながら低いとみられています。

海外化学企業大手との競争激化

日本の化学業界の出荷額は、米国、中国に続き世界第三位の規模にありますが、各企業の業績をみると、日本企業の規模が大きくないことがわかります。

Chemical & Engineering Newsの各社資料によると、2015年度の化学業界の世界では、三菱ケミカルが11位、住友化学が18位、三井化学が19位となっています。

近年は、米国や独といった欧米企業だけではなく、中国、サウジアラビア、台湾、韓国のメーカーが力を伸ばし、競争はさらに激しいものになっています。

今後、海外化学企業大手との競争に勝利するためには、海外展開や、異業種間の連携などによる集約化・拡大化が必須となるでしょう。

ジェネリック農薬

国内の農薬業界で議論されているのがジェネリック農薬です。ジェネリックとは後発品のことで、オリジナルの先発品よりも安価に製造できるコピー製品のことになります。そして、特許の切れたオリジナルのレシピ通りに作るので安価に製造できるというメリットがあります。

しかし、日本の制度では、ジェネリック農薬にも先発品と同等の毒性試験や効果試験が課されており、それ相応のコストがかかり、安価に製造できないという問題を抱えています。

業界の今後の将来性

新たな連携を深めること

2016年の化学業界は、原油安や円安を追い風に好況となりましたが、この状況は長くは持たないというのが大方の予想です。

米国や中国には多くのプラント建設計画があり、旭化成の水島プラント停止のような問題は今のところ発生していないものの、エチレンの国内需要や輸出がピークを過ぎたことは誰の目にも明らかです。

しかし、2014年からの連続した企業の統廃合劇が、国内エチレンプラントの稼働率に好影響を与えていることもまた事実です。企業間のみならず、その分野や工程及びコンビナート同士といった連携を深めることで市場拡大の芽も十分に出てきます。

化学業界の停滞は、関連産業や地域雇用に少なくない影響を及ぼします。追い風が吹いている今のうちに次の一手を打てるかどうかに、業界の未来はかかっているのかもしれません。

業界研究本

●『日経業界地図 2017年版』日本経済新聞社

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